『運び屋』を観た!!:10年ぶりの主演復帰作!

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老いを迎え入れるな!1年ぶりの新作は10年ぶりの主演復帰作!

この記事は内容についてのネタバレを含みます。

満足度⇒★★★★
レビュー⇒昨年公開の「15時17分、パリ行き」では主演3人に事件の当事者本人をキャスティングするなど、リアリティを前面に押し出して話題になりましたが、
1年ぶりの新作は「グラン・トリノ」以来10年ぶりとなる主演復帰作!
90歳を目前にした御年88歳。
そんなクリント・イーストウッド監督は毎年のように新作を世に送り出しており、老いてますます盛んとはまさにこのことか!
立ち止まらずに表現を続けることこそが彼の生きがいなのでしょうか。
今作でイーストウッド監督が演じたのは監督同年代の90歳の主人公アール。
同年代のキャラクターを監督自ら主演を買って出たというのは、
このキャラクターを一番繊細に表現するための監督が選んだ最善の手段ではなないでしょうか。
それだけかなり力の入った作品に感じられました。

仕事を居場所にした男は家族も何もかも失ってしまう

主人公アールは娘の結婚式にすら出席せずに仕事に情熱を注いできたツケが回り、家族との関係は冷え切ってしまう。
デジタルを信用しない彼は時代の流れには勝てず、ネット販売に押され彼の経営する農園は廃業してしまう。
今まで仕事に身を捧げてきた彼にはもう何も残されていなかった…。

仕事も失い、家族にも拒絶されてしまった彼だからこそ、
新たな自分の居場所として「運び屋」になってしまったのではないでしょうか。
最初は運ぶ荷物の内容は知らず、ただ運ぶだけ。いわれた場所へ荷物を運びお金を受け取る。ただそれだけのはず。
しかし、それが麻薬であると知ってもなお「運び屋」を続けたのは、今の彼にはそれこそが自分の居場所だったからかもしれません。
家族と疎遠になり、孤独の身となった彼は、仕事で得た金を退役軍人の友人たちのために使い、パーティを開きました。
また、麻薬組織とも次第に親しくなっていきましたね。
まるで自らの孤独を紛らわせるように。

最後に見つけた本当の居場所

彼の過去違反切符を切られたことがない運転は、
麻薬組織にとっても、捕まえる側にとっても動きを予想できない存在でした。
そのため、次第に「運び屋」として頭角を現すアールでしたが、
彼の本当の居場所はここではなかったのだと思います。
疎遠になってしまった妻が倒れたと連絡がきたアール。
ちょうどその時アールは運びの仕事の真っただ中でした。
おそらく過去の彼であれば仕事を優先し、妻のもとに駆け付けることもなかったともいます。
自分の娘の結婚式ですら出席しなかった人間ですから。
ですが、妻の病床には駆け付けた。
勝手な解釈ですが、彼は非常に不器用な人間だったのではないかともいます。
いつしか仕事に身を捧げるようになり、家族と疎遠になっていけばいくほど、家族から逃げるように仕事に身を捧げていたのではないでしょうか。
娘の結婚式の日に品評会に出ていたアールが、その後のバーで結婚式を挙げるグループに遭遇するシーンがあります。
その一団を観る彼の眼は、今日が娘の結婚式であることに気付きながらも、最早合わせる顔がなく仕事だからと逃げてしまっていたようにも見えました。
そんな彼が、妻の最期に仕事を放り出してでも死に目に立ち会ったというのは、長い時間をかけて、遠回りしながらもようやく自らの居場所がどこであるのかを悟ったからではないでしょうか。

まとめ

長々と書かせていただきましたが、映画の出来としては非常に良かったです!
アールの娘役には監督本人の娘のアリソン・イーストウッドがキャスティングされており、親子共演でより一層関係性を繊細に描けていたと思います。
その他、ブラッドリー・クーパー、マイケル・ペーニャ、ローレンス・フィッシュバーンがアールを追う捜査官側の人間としてキャスティングされています。
ブラッドリー・クーパーはアメリカン・スナイパーぶりのイーストウッド監督作品ですし、自らが監督を務めた「アリー/スター誕生」はもともとイーストウッド監督がメガホンをとる予定だったそうですから、
今一番イーストウッド監督と関係が深く、理解している俳優かも知れません。
個人的な解釈を長々と書かせていただきましたが、解釈違い多々あるかと思いますのでその際はご容赦ください。
イーストウッド監督の主演復帰作として非常に力の入った作品だと思いましたし、
ずっしりと心に来るラストも秀逸だったと思います。
イーストウッド監督のファンであってもなくても必見の作品です!

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この記事を書いた人

人生に映画とラーメンを、をテーマに、休日はほとんどインドア趣味に勤しむ関西出身のしがない社会人。
最近カメラ趣味に目覚めてちょこっとアウトドアになりかけです。

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